2023-01-01から1年間の記事一覧
僕のこころは くらげのこころ 海に溶け出す とろとろのこころ 君のこころは アメフラシのこころ 海に溶け出す 鮮やかなこころ とろとろのこころと 鮮やかなこころが 海水とまじって すこしにごった かなしいね 僕らのこころ このままどこかへ 流れるみたい …
山へ行こうと思ったのに、海に来てしまった。ここは熱い海、熱海。 友人と朝の電車に乗り、缶ビールを開けて歓談。しばらくすると「次は終点、熱海、熱海」とのアナウンスが聞こえてくる。あれ?小田原は? 終点に向かう車窓から大海原を眺めていると、近海…
「亡くなったって、今朝」 「そう、もう結構なトシだったからね」 「聞いた話だけど、昔いた施設ではいろいろあったみたいで、もうずいぶんな歳だった時にここに来て、体はひょろっとしていたし、毛も所々抜けていたけど、たぶん水が合ったのね、数ヶ月で体…
静かな家の中庭で、しだれ桜が揺れている。緑の葉がさらさら揺れて、それを眺めている私の肌にも風が当たる。この時、間違いなく私は生きていると思う。いま、この瞬間、生きている。他の誰でもない私が、いま、生きている。その実感がある。 実家の柱には私…
精神の発展・跳躍を現実で調整することが生活。 精神の発展・跳躍で現実を調整することが創作。 生活は絶え間ない自らの投棄がある。 精神はいかなる時も、発展・跳躍することが役割。 現実は他者の存在なしにはあり得ない。 創作は他者の訪れを待つ。 生活…
喫茶店の横道を一本入ると、どん詰まりに錆び付いたトタン屋根の長屋がある。仕事に行き詰まったとき、人間関係に躓いたとき、そもそもの仕事も人間関係もなくなったとき、決まってこの長屋に顔を出す。隙間風どころでは済まなそうな戸の前で「御免。」と声…
タロはかわいいやつだった。いつも私の後ろをついてきて、甘えた声で鳴いた。私が中学生になった頃に飼い始めたから、だいたい十年くらいうちにいたことになる。 ある雨の日、軒下にずぶ濡れになった大きな毛玉があると思ったら尾っぽがぴょんと生えて、よく…
山の麓の開けたところに、穏やかな小川がひとつ流れている。その小川は草原の中を緩やかにカーブしながら流れ、傍らに小さな掘っ立て小屋がひとつ、申し訳なさそうに佇んでいる。小屋の隣には、何のための動力か、小屋より少し背丈の低い木製の水車が、小川…
この部屋には、入り口に相当する通路も、出口に見合う扉もなく、真ん中に小さな机と椅子が一組置かれてあるのみ、見渡す限り、意思の疎通が取れそうな相手もいない。最初に目覚めたとき、私は一人で座っていた。目の前には小さな机とノート、そしてペン。目…